創作メモ:世界観で見るサイズフェチ(2)

 前回の記事ではまとめきれなかったので、続きの記事となります。
 前回考察した世界観は「現代」「西洋ファンタジー」「和風ファンタジー」でした。
 今回は私は普段書くことはあまりないのですが、だからこそ開拓の余地が多く残されている世界観でどのようにサイズフェチを表現するかを考察していきたいと思います。
 考察対象は「海洋冒険もの」「スチームパンク」「サイバーパンク」「バーチャルリアリティ」「スペースオペラ」「ロボットもの」です。
 他にもサイズフェチが表現できる世界観はあると思いますが、今回はこの6つです。二次創作世界観については、原作によって全く違うのでそれもまた今度……。

4:海洋冒険もの
4-1:概要
 広義の意味ではファンタジーや、近世~ルネサンス期のヨーロッパを舞台とした作品になると思いますが、海洋冒険ものは陸を舞台とした世界観とは色々表現できることに違いがあると思うので、敢えて別世界観として分けました。
4-2:特徴
 基本的にはファンタジーや、近世以降のヨーロッパと同じような世界観になると思います。ただし、海洋冒険ものの主な舞台は未知の島や海の上です。
 誰も知らない島に生息する巨人種や船の上で巻き起こる奇病など、独自の舞台で物語を描くことができるでしょう。
4-3:相性
 ファンタジーよりか、現実よりかで分かれますが基本的にはファンタジーと同程度にはサイズフェチ相性はいいと思います。
 基本的に、他の世界観と比べて海洋冒険ものは特に登場人物視点で「未知」とされるものを描きやすいので、突然の事態に対するパニック演出とは相性がいいでしょう。
4-4:シチュエーション
 特徴や相性の項目でも触れましたが、海洋冒険ものは「未知」との接触から始まる物語が描きやすいです。例えばガリバー旅行記に登場する巨人の国のような、主人公の常識を覆す文明との接触はポピュラーですね。
 個人的には、船の乗員が密航者によって上限を越えてしまう、冷たい方程式とサイズフェチの組み合わせも面白いと思います。
 冷たい方程式はスペースオペラの領分ですが、人数制限を越えてしまった密室でのジレンマがテーマなので海の上の船でも応用はできるでしょう。
 人数制限を越えてしまった乗員を小さくすることで物資をごまかすとか、あるいは最初から物資を節約するために、船の運営に必要ない乗員は小さくして生活してもらうとか。
 あとは、最初から巨人が知られている世界観で、巨人を乗り物とした渡航というのもあるかもしれません。

5:スチームパンク
5-1:概要
 スチームパンクとは、現実で繁栄している電気技術とは異なり蒸気機関の技術が発展した「もしも」の文明を描くSFジャンルとなります。有名所ではスタジオジブリの天空の城ラピュタでしょうか。
5-2:特徴
 スチームパンクだからこそ描ける、描きやすいサイズフェチというのはあまり想像ができませんが、スチームパンクにはある特徴があります。
 それは、大きければ大きいほど優れているという点です。これは偏見かもしれませんが、スチームパンク世界は現実の電子回路の代わりに蒸気機関と歯車、ゼンマイを利用した技術が発展しているためだと思います。
 大きければ大きいほどいい……つまり、巨大娘ですね。
 流石に蒸気機関で巨大娘が誕生・発生したと結びつけるのは難しいですが、奇病や魔法、異能力の類で産まれた巨大娘をスチームパンクと組み合わせれば大丈夫でしょう。
 逆に身体が小さくなってしまうシュリンカーでは、巨大な設備を扱えないというギャップ表現ができるかもしれません。
5-3:相性
 スチームパンクとサイズフェチの相性は特徴で多くを解説してしまいましたが、このように相性がさほど良くはない世界観でも見方を変えることでサイズフェチ表現はできそうですね。
5-4:シチュエーション
 ここでは具体的に、スチームパンク世界で描ける巨大娘の物語例を考えてみます。
 例えば、ある発明家が暴走して普通の人間では取り回しが難しいほどの巨大な蒸気機関を作ってしまったとします。このままでは運用コストが高いだけの代物ですが、そこに巨大娘が現れれば話は変わります。
 彼女は使い方さえ覚えれば一人で巨大な蒸気機関を動かせる存在。彼女の登場から多くの恩恵を受ける市民たち。
 そんな世界の日常を描く作品というのもアリかもしれません。

6:サイバーパンク
6-1:概要
 サイバーパンクはスチームパンクとは打って変わって電子技術が大きく向上した世界を描くSFジャンルです。
 サイバネティクスの発展により臓器移植や義手義足などの交換が容易になり、また人々の意識が電脳空間へ移住を始める世界です。
 ……概ね現実がサイバーパンクになりつつある気がします。
 主な舞台はアメリカが多いですが、ブレードランナーやシャドウランに見られるように、日本が世界の覇権を握っていることも珍しくありません。
 これは、サイバーパンクが流行した当時のアメリカでは日本の高度成長期に対する驚異と脅威の表れだと言われています。
6-2:特徴
 サイバーパンク世界の特徴は概要に記したとおり、サイバネティクスの発展や電脳世界です。また、「パンク」という名の通り、社会体制に対する反発もキーワードとなっています。
6-3:相性
 サイバーパンクは現実の延長にある世界観ですが、技術の大幅な進化からサイズフェチとの相性はむしろ良好だと考えています。
 例えば攻殻機動隊に見られるような「義体」。意識を小型あるいは大型の人造人間に移し替えることでシュリンカーや巨大娘の表現は容易にできるでしょう。
 電脳空間を舞台とした物語もサイバーパンクではありますが、これはもはや「バーチャルリアリティ」という別ジャンルとして盛り上がっているので、項目を分けて解説します。
6-4:シチュエーション
 サイバーパンクはサイズフェチとの相性が良好な世界観ですが、サイバーパンク特有のシチュエーションはこれもまたユニークなものとなるでしょう。
 特徴で触れているとおり、サイバーパンクは「社会への反発」も鍵となる世界観です。
 ならば、圧政を強いる社会体制へのレジスタンス活動をする主人公が、敵勢力によって小型義体に意識を移し替えられてしまった。あるいは逆に、敵地に潜入するため小型義体に意識を移し替えて乗り込む。敵陣を壊滅させるため巨大義体を操作する少女。
 このような物語はサイバーパンクの暗い世界観を根っことしたサイズフェチの物語になりそうです。
 もちろん、反抗要素を無視して単に技術が優れているだけの未来世界として取り扱ってもいいでしょう。私はむしろそちらの方がゲフンゲフン。

7:バーチャルリアリティ
7-1:概要
 VRとも略される、仮想現実世界に足を踏み入れることが可能となった世界を描くジャンルです。
 現実世界でも既に普及しているVRChatはその典型ですが、フィクションとしてのVRものは特に、視覚だけではなく触覚や嗅覚まで仮想現実で再現されるほど技術力が向上している作品が見受けられます。
7-2:特徴
 ある意味ではファンタジー以上になんでもありな世界観です。
 ファンタジー世界でも、なんの理屈も持たない突然な巨大化現象などは不自然さを与えてしまいますが、VRならそのような突発的な出来事も「バグ」で理屈をつけることができてしまいます。
 バグを除いても、プログラミングされた世界で巨大娘として振る舞うプレイヤーや、縮小人間として広大な世界を冒険するシュリンカーゲームという形で様々なサイズフェチの表現ができるでしょう。
 理不尽な展開としては、VR世界での出来事が現実に反映される、ログアウト不能、現実に戻っても巨大化・縮小化したままといったものが考えられます。
7-3:相性
 特徴でアレコレ述べているように、VRとサイズフェチの相性は非常に高いと言えるでしょう。
 そもそも現実でも、サイズフェチを再現するためのVRは既に存在していますので……。
7-4:シチュエーション
 うっかり特徴の項目でシチュエーションを並べてしまったのでここは割愛で……。

8:スペースオペラ
8-1:概要
 スペースオペラ、略してスペオペとも呼ばれる世界観は、宇宙を舞台にしています。有名所の作品としては銀河英雄伝説や宇宙戦艦ヤマト、超時空要塞マクロスでしょうか。機動戦士ガンダムもそうですね。
 ただ、ロボットものはまた別のサイズフェチ表現に繋がるので後述させていただきます。
8-2:特徴
 宇宙が舞台の海洋冒険ものとも言われていますが、海洋冒険ものがファンタジーと親和性が高いのに対してスペースオペラはSFジャンルです。つまり、スペースオペラ作品としてサイズフェチ表現をするなら魔法よりも超常的な科学力や異星人を取り扱ったほうが違和感はないでしょう。
 まあ、宇宙に満ちるダークエネルギー(未解析のエネルギーの総称)は実は魔法を使うためのものだった! というのもポピュラーだと思いますが。
8-3:相性
 巨大娘に関しては相性が良好と言えるでしょう。マクロスシリーズに登場するゼントラーディのような巨大な異星人との交流はスペースオペラにおけるサイズフェチ表現としてポピュラーです。
 巨大娘な異星人との交流は、根本的には海洋冒険ものにおける未知の部族との接触と変わりはない気がしますが、スペースオペラで巨大娘星人を扱う場合は、地球の尺度を無視して超弩級巨大娘を出すことができます。
 一方でシュリンカーはとなると、特別「小さくなる」ことが鍵となる、スペースオペラ特有の展開はあまり考えられないかもしれません。
 地球に巨大な異星人がやってきた! とか、巨大娘星に漂流した! とかはそれっぽいですが、「小さくなった」わけではないので……。
 まあ、それでも主人公の目に映るスケール感の急激な拡大という点では特に問題ないかもしれません。
 海洋冒険もので先に出してしまった「冷たい方程式」も、元々はスペースオペラでの物語類型ですからね。
8-4:シチュエーション
 ことごとく、この項目に至る前にシチュエーションの考察をしてしまっていますが、スペースオペラもなんだかんだで特有のサイズフェチ表現が可能な世界観ということが伝わっていただければ……。

9:ロボットもの
9-1:概要
 鉄人28号を代表とし、マジンガーZや機動戦士ガンダムなどの巨大ロボットが人気のSFジャンルです。
 鉄腕アトムやドラえもんもロボットものと言えますが、ここでは表現したいものが異なるので除外させていただきます。代表例として上げた鉄人28号も同じくです。
 サイズフェチにおけるロボットものは特に、人間が機械に乗り込むジャンルとして解説をさせていただきます。
9-2:特徴
 ロボットものは基本的に、突出した技術力によって作り出された巨大ロボットとそれに乗り込む主人公が土台となっています。
 また、科学ではなく魔法の力で作り出されたロボットというものも少なくありません。
 SF、ファンタジーどちらの世界観を軸にしてもロボットを主役とすることは可能ですね。
9-3:相性
 ロボットものとサイズフェチの相性はさほど悪くはありません。例えば、巨大な少女の姿をした敵と戦うために巨大ロボットに乗り込んで戦うシチュエーションが考えられます……が、サイズフェチで一般的に求められる物語なのかは保証はできません。
 ほとんど人間と同じ姿をした少女型巨大ロボットに乗り込む主人公、という形にすればある程度はフェチっぽいかもしれませんね。
 一方、巨大ロボットではなく超小型ロボットなら相性は良好です。
 非常に小さく、人間の大きさではかえって対処が困難な敵と戦うための超小型ロボットに意識を移す主人公や、医療のために開発されたナノマシンに乗り込んで治療を行う医者など。
 問題は、パンク要素を取り除いているとはいえ技術的にはサイバーパンクの領域と被っていることですが……。
9-4:シチュエーション
 今回も相性の項目で色々と語ってしまっていますが、ロボットものの場合はロボットに乗り込む動機やロボットを動かせる理由をサイズフェチと結びつけるのもいいかもしれません。
 例えば、少女型巨大ロボットには幼馴染の少女の魂が宿っており、主人公はその魂と交流を図ることができるとか。
 あるいは、なんらかの理由で超小型ロボットを開発したはいいが、そんなものに乗ることができる人間は通常存在しないため、奇病で小さくなった人間や、パイロットとして運用するべく縮められた人間を登場させるとかですね。

 今回は私があまり書いたことがない分野の考察記事となりました。
 さほど慣れていない分野ですので頓珍漢なことを書いてしまっているかもしれませんが、参考にしていただければ幸いです。
 いずれも最終的な結論としては、ジャンルの王道を理解しつつその枠にとらわれないことが、多様な作品を生み出す鍵になると私は考えています。

 次回は二次創作の世界観とサイズフェチの考察を行いたいと考えています。
 なお、支援サイト等の有償活動と二次創作の権利関係は敢えて触れる予定はありません。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です