【ブルーアーカイブ二次創作】VRゲームin膀胱

 キヴォトス。膨大な数の学校から成立する、超巨大学園都市。
 私はそこで、“先生”として活動していた。
 ……先生と言っても、教鞭を振るうのが目的ではなく、なんでも屋染みた組織「シャーレ」のリーダーなのだが。
「うわああああ! スケバンの襲撃だ! みんな構えろー!!」
「おい、理科室でまた爆発が起きたぞ!!」
「ちょっと! 私のプリン食べたの誰!?」
 なのだが、度重なる問題の連続でいささか胃が痛い……。

 気がつくと、どこかのコンピュータ室のような場所にたどり着いていた。
 私はそこらじゅうで発生した問題を、一つ一つ解決するためキヴォトスを駆け巡っていたのだが、道に迷ってしまったのだろうか。
「な、なるほど……先生は迷い込んでしまったんですね?」
 桃色の髪をした自信なさげな少女、花岡ユズが応対に応じる。
「ここは……ゲーム開発部だったかな。ごめん、邪魔したね。すぐ出るよ」
「あっ、先生……その……」
 ユズが、私の袖を引っ張って引き止める。なにか用事があるのだろうか?
「用事って言うほどじゃないんですけれど……もしお疲れでしたら、リラックスしていきませんか?」
「たしかに一理あるな……迷うほどに疲れてるんなら、このままじゃ私までトラブルを引き起こしそうだ」
「で、でしたら! 私達が作った新作ゲームを遊んでいきませんか?」
 目を輝かせる少女。もしかして、テストプレイも兼ねようということだろうか。
「そうだね。せっかくだし遊ばせてもらうよ」

 それから開発部の少女たちが持ってきたのは、ヴァーチャルリアリティ用のヘッドセットだった。
 どうやら神経をコンピュータに接続し、リアリティの高いVRを体験するゲームらしい。
「そ、それではお楽しみください」
 意識は光りに包まれ、電子の世界へと没入する。
 数秒の後に気がつくと、私はベッドの上にいた。
 しかし、そのベッドはあまりに広く、足元に広がるシーツだけでも地平線まで届くほどの広大さだった。
「ここは……寝室? それにしてもやけに広いけれど」
 見慣れたようで、見慣れない光景。不思議な部屋を見渡す私に、上空から少女の声が響く。
「やあ、いらっしゃい。先生」
 声がする方向へ見上げると、そこに広がるのは巨大な少女の顔。
 色素が薄い、白髪の少女は私にも見覚えがある。ハッカー集団「ヴェリタス」で活動する、小鈎ハレという少女だ。
「君は……いわゆるNPCなのかな。これはそういうゲームなのかい? 巨大な女の子から逃げ回るとか」
 落ち着こう、私。私が今いるのはゲームの世界だ。なんだってありなのだから、こういうゲームだってあるのだろう。
「1/3だけ正解。ここはゲームの世界だけど、私はNPCじゃなくてもうひとりのPCだよ」
「はあはあ、つまり、非対称な対戦ゲームかな? でも、ゲーム開発部はわざわざ君を呼んだのかい?」
「そこは安心していいよ。ゲーム開発部は何も知らないし、先生は私がこのゲームの世界に招いたのだから」
「何も安心できることないよね!? 招いたって、どういうことだい」
「なあに、ちょっとした嫉妬心だよ。先生にはゲーム開発部のゲームじゃなく、私自身で癒やされて欲しいなって」
 癒やし……悪意はないのかもしれないが、巨大な少女と小さな私という構図には圧迫感を覚えてしまう。
「君は、私を癒やすためにそちらの用意したゲーム世界にハッキングで誘導した……ってことでいいのかな?」
「そういう認識であってるよ」
 なんだか不安しかないのだが、癒やしたいと言うならそれに乗っかる他なかろう。
 どちらにせよ、先程から試しているログアウトも上手く行かないのだ。ハレの口車には乗るしかない。
「それで、なにをするつもりなのかな?」
「先生は胎内くぐりって知ってる?」
「ごめん、ちょっと詳しくないな」
「簡単に言うと、修験者が山を母胎と見立てて、産まれ直すことで魂を浄化する修行だよ」
「……なんだかよくわからないけれど、つまりは?」
「山じゃなく、直接女の人の胎内を使って産まれ直せばもっと効果ありそうだよね」
「ごめん、ちょっと理解が追いつかないんだけど。結局どういうことかな」
「先生には、私の膀胱に入ってもらって、そのままおしっこになる経験をしてもらうよ」
「パードゥン?」
 一生懸命説明してくれているハレには申し訳ないが、言っていることが全く理解できなかった。
「私に、君のおしっこになれと?」
「そういうこと。現実じゃできなくても、ゲームの世界なら疑似体験できるからね」
 それじゃあ、と言いながら、ハレは私を否応なくつまみ上げる。
 そのままスカートを脱ぎだすと、眼前に広がるのはハレの陰唇だ。
 縦に裂け目を広げるクレバスは、彼女の白髪と同じ白い毛で覆われている。
 陰唇それ自体も、私を飲み込もうと今か今かとヒクヒクと蠢き続ける。
「ちょ、ちょっと! 問答無用か!!」
「それじゃあ、おしっこ化体験を楽しんでいってね」
 ハレが私を摘んだ指を、尿道口に押し当てるとそのまま私は奥へ奥へと運ばれていく。
 なにかに押されているわけでもないのだが、まるでゲームの自動スクロールのように運ばれている。これはまさに、ゲームの世界だからこそなのだろう。
 ゲームの世界ではあるが、妙なところにこだわりがあるのか。
 尿道内には謎の光源があり、周囲の肉壁は薄桃色をしているのが見てわかるし、その奥からはザアザアという血潮の流れが響き渡っている。
 流石に電子の世界で尿のカスなどは見当たらないが、嗅覚を刺激するのは疑似再現されたアンモニア臭だろうか。
 奥へ運ばれると膀胱口を通り抜け、ハレという少女の膀胱へと放り込まれた。

 尿道同様、謎の光源があるこのドームは、壁には辺り一面を覆うひだが見受けられ、その一部に空いた2つの穴からは黄金の水がちゃぽちゃぽと湧き出ている。
「これが、ハレのおしっこかあ……」
 いや、ここはあくまでゲーム世界。いくらおしっこのように見せかけていても実際は0と1のデータに過ぎないのだが。
 だが、不必要なまでにこの空間を覆い尽くすアンモニア臭。そしてハレの体内にいると実感させられる人肌サウナはまるでこの世界を、本当にリアルなハレの膀胱の中なのではないかと疑わせてしまう。
「現実のおしっこは、排尿されてからしばらく経ってからじゃないとアンモニアの臭いは出ないらしいけれど……」
 知らなかった、というよりはカリカチュア。ゲームとしての誇張表現なのだろう。
 おしっこに満たされる空間なら、その臭いも強烈だという。
「それにしても、手加減が欲しかったな……」
 尿管から徐々に溢れてくるハレのおしっこ……電子で表現されたものとはいえ、生ぬるくアンモニア臭を放つそれは、やはりおしっこと言う他あるまい。
 おしっこは徐々に膀胱を満たしていき、膀胱壁を押し広げていく。
「立ち泳ぎもつかれるんだけれど、いつになったら出られるんだろうな」
 立ち泳ぎをし続け、おしっこがハレの膀胱全体の半分を満たすほどになってからだろうか。異変が起きる。

 ザパア、ザパア

 膀胱内のおしっこが、波を立て始めたのだ。
 これはもしかして、ハレがおしっこを我慢している?
「ハレ! おしっこは我慢しないほうがいいよ!!」
「だ、大丈夫……気にしないで」
 いや、気にするし、出られるなら早く出たいのだが。
 しかし、異変はそれだけではなかった。
「うわっぷ!」
 立て続けに起こるおしっこの波。それに飲み込まれた私は溺れてしまうかと思っていた。
 しかし、私の身に異変が起きたのだ。
「息が……あれ、苦しくない」
 それよりも、体の感覚だ。まるで、全身が溶けてしまったかのように感覚が消失している。
「もしかして、おしっこになるってそういう……」
 気がつくと、意識はハレの膀胱全体に溶け渡り、全身で彼女の膀胱を感じていた。
 壁から伝わる、ハレの体温というぬくもり。それを味わう私は、いつしかこれまで感じたことのないリラックスを体験していた。
「これが、ハレの伝えたかったこと……?」

 私自身がハレのおしっこになってから、何時間経っただろうか。
 あるいは、まだそれほど経っていないのか。
 ハレの膀胱に再び異変が訪れた。
 おしっこが溜まった膀胱なら、健常であれば当然発生する生理現象。
 膀胱の底に穴が空き、それを基点に渦が巻き起こる。
 ギュルギュルと、ギュルギュルと。
 当然、おしっこと成り果てた私もそれに巻き込まれるように排泄されていき……。

 ジョボボボボ……

 私の身体は、鈍色の壁へと叩きつけられていた。
 床も鈍色、壁も鈍色、天上には同じく鈍色のアーチが一つ、架けられている。
 おそらくはバケツと言ったところだろうか。
 膀胱の容量が限界に達したハレは、内部のおしっこを私ごと、バケツに排尿したのだ。
「ふう、どうだった? 先生。私のおしっこになった気分は」
「思いの外、いい気分だったよ」
 肉体データを失った以上、言葉は発せないはずだ。
 だが、不思議なことにその意志は伝えられていたようだ。
「そう、それは良かったよ。それじゃあ、これからも頑張ってね」
 ハレはそう言い残すと、このゲームの終了処理を行った。

 再び、意識は光に包まれる。
 目に映る景色は、ゲームに入る前の世界。ゲーム開発部の部室だ。
「あっ、先生! 良かったです……」
「ここは……そういえば、ゲーム開発部のゲームを遊ぶはずだったっけ」
「そうなんです。ですが、突然画面が暗転して……」
 なるほど、どうやらハレの仕業ということは彼女たちに伝わっていないようだ。
 なら、こちらも真実は伏せておこうか。
「残念だったね。だけど、私は大丈夫だよ」
「先生?」
「珍しい体験が、できたからね」
 トラブル続きのキヴォトスだが、悪意だけの世界ではない。
 これからも、頑張っていこうと改めて心に決める出来事だった。

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