蜜月の嫐り(小説版・サンプル)

fantiaの500円プラン作品2021年7月号のサンプルとなります。
本投稿では作品内から一部分を抜粋しています。
https://fantia.jp/posts/819805

「ねえ、佳苗さん?」
 暗闇の中で、同級生の名前が呼ばれる。
 その名を呼んでいるのは、クラスのいじめっ子グループの少女だ。
 無責任ではあるが、僕には関わりのない話だ。心苦しいが、ここは無視をさせてもらおう。
 それよりも、自分が今どこにいるのか。それが問題だ。
 なにやら蒸し暑く、息苦しい。
 それでいて、壁越しにクラスメイトたちの会話は聞こえてくる。
「な、なんでしょうか……?」
「実はね、面白いおもちゃを見つけたのよ」
「佳苗さんと、それで遊びたいなーって」
 律儀に返事を返す佳苗さんと、「おもちゃで遊びたい」などと言いだすいじめっ子たち。
 おもちゃで遊ぶ、といえば可愛らしいが、どことなく嫌な予感がする。
「どんなものですか?」
「“これ”よ。何かわかるわよね?」
 いじめっ子はそう言うと、僕のを閉じ込めていた壁が開き出す。
 否、それは壁ではなく……。
「仁くん!? どうしてこんなに小さく……」
 開け放たれた“壁”の外には、佳苗さんやいじめっ子たちの巨大な姿があった。
 しかし、佳苗さんから見れば僕の方こそ小さくなっているようで、これはつまり、今まで僕を閉じ込めていた“壁”はいじめっ子の誰かの手のひらだったということなのだろう。
「お父様の会社が縮小薬っていうのを開発したのよ。それを拝借して私たちが使うのよ。どう? 面白いでしょう」
 とんでもない話に巻き込まれてしまったようだ。
 これが、いじめを見て見ぬ振りしてしまおうなどとした僕への罰ということか……いや、その頃にはすでに巻き込まれていたようだが。
「そんな……駄目に決まってます! すぐに解放してください!」
「いいわよ? ただし、佳苗さんが私たちの指示に従ったらね。もし従わないなら、仁は私たちで“使う”わよ」
 見捨てようとした僕とは対象的に、そんな僕を助けるよう申し建てする佳苗さん。
 それに対するいじめっ子たちの答えは、意外にもあっさりとしていた。
 指示に従う、使う、などの言葉が不気味ではあるけれど……。
「一体、何をしたら解放してくれるのですか?」
「そうねえ、まずはパンツを脱いでくれないかしら」
「パ、パンツ……!? 断ったら、仁くんが酷い目に合わされるんですよね……?」
「あら、酷い目だなんてとんでもないわね。でも、彼の扱いは私たちに委ねられるわよ」
「うう、恥ずかしい……」
 ファサリ、とスカートを脱ぎ、目の前で純白のパンツを下ろしていく佳苗さんの姿は、恥ずかしそうな表情も相まっていじめっ子たちに嗜虐的な笑顔を浮かべさせていた。

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