宝箱の罠

ここは様々な冒険者が攻略を目指すダンジョン。
最下層には莫大な富が眠っているとされ、一攫千金を目指す者は絶えない。
だが安全なダンジョンなど存在せず、このダンジョンも下層に行くに連れて危険な罠が増えていく。
だが、危険な罠は何も下層のみに存在するわけではない。何事にも例外というものはあり、ここダンジョン表層部でも危険な罠が確認されることはある。

「よっと、これで終いだ!」

鎧を身に纏った軽戦士が剣を振るい、一匹のゴブリンを斬り伏せる。

「流石だな、アラン」

「へへっ、この程度楽勝だ。それより道案内頼むぜ、バーナード」

「アランさん、擦り傷がありますよ。今癒やしますね」

「サンキューな、クレア」

彼らは故郷を同じくする三人の冒険者パーティだ。
前衛を戦士のアランが守り、後衛のクレアが癒やす。二人のスキをバーナードが中衛でサポートする陣形である。
新人冒険者である彼らはどこか緊張感がなく、和気あいあいとしながらダンジョン攻略を楽しんでいる。

「おっと、こっちに宝箱の気配がするぜ!」

バーナードが冒険者パーティから離れて駆け出す。
仲間たちからは静止の声も上がるが、冒険者になりたてで落ち着きのない彼はそれに耳を貸さない。
彼の宝箱に対する嗅覚は非常に鋭く、複雑な道を乗り越えた先には事実、小さなものではあるが未知の宝箱が存在していた。
だが、その代償に彼は仲間たちから完全にはぐれてしまったようだ。

「おや、誰もついてきてないな。まあいいか、俺が先に宝箱を開けてやるぜ!」

表層には罠などない、そう甘く見ていた彼は後に大きな後悔を背負うことになる。

「さあて、一体どんなお宝が……」

と口に出しながら宝箱を開く。しかし、その中には何も入っていない。

「あれ、何もないな……誰かが先に取ったのか?」

バーナードがもっと詳しく宝箱を調べると、一枚の紙切れを発見する。

『宝はお前自信だ』

「……何だこれ、リドルか?」

紙の文章を読み上げると、突如宝箱が光りだした。

「うおっ、罠か!?」

「……ここは?」

いつの間にか気絶していたらしいバーナードが周囲を見渡す。

床はダンジョンの地面とは異なる、薄茶色のまるで一枚の板でできているかのようだった。
周囲を囲む壁も同じく、それぞれ一枚の板を使ってこの空間を囲んでいるかのようで、まるで箱の中にいるような……
ここまで見渡して、ハッとしながらバーナードは頭上を見上げる。

「……なんてこった」

天井に当たる場所は、床や壁とは異なり板ではない。
四方を取り囲む壁は天井部に当たる部分で急に途切れており、そもそもこの部屋に天井など存在しなかった。
部屋の外部に当たる部分、そこには今までいたダンジョンと同じ天井が遠くにあった。

「ミニマムの罠……なんで表層なんかに」

ミニマムの罠、それは本来ダンジョンの下層から存在する悪辣な罠である。
これにかかった人物は『ミニマム』の状態異常になり身長が極端に縮み、特別なアイテムを使用しなければ解除されることがない。
ミニマムで縮んだ先の身長は1cm。通常は仲間とともにいるためミニマム後もある程度はフォローが期待できるが、仲間からはぐれたバーナードは一人きりでミニマムとなってしまった。つまり、そもそも仲間に気づいてもらえるかすら怪しいのである。

「は、はは……俺の冒険はここで終わりってことかよ」

バーナードが絶望の表情を見せるが、真の絶望は未だ訪れていなかった。

コツ、コツ……
宝箱の外から靴音が聞こえる。

「! 誰かが来た。おーい、俺はここだ!!」

「バーナードはどこでしょうか……」

靴の主はヒーラーのクレアであるようだ。しかし、彼女の様子は少しおかしい。

「……私、ちょっと催して来てしまったのですがどうしましょうか」

彼女はどうやらトイレを我慢しているようで、手を股間に添えもじもじとしながら歩いている。

「あっ、あれは宝箱……どうやら開いているようですね」

中身が空の宝箱……性格にはバーナードが入っているそれを見つけたクレアは閃く。
そして、それはバーナードにとって最悪の未来を作り出す。

「……これをおトイレにしましょうか」

「待ってくれ、俺がここにいるんだ!!」

バーナードは慌てて自らの存在を示そうと声を荒げるが、尿意に気を取られているクレアには届かない。
宝箱の外からは衣擦れの音が聞こえ、少しすると頭上には肌色の天井が現れる。
うっすらとした、未だ生え揃っていない陰毛に囲まれた陰唇がバーナードの目を覆い尽くす。
未だに誰の手も加えられていない、ぴっちりと閉じられたクレバスを少女は自らの手で少しだけ開き、尿道口を覗かせる。
用を足す準備が整ったようで、クレアは宝箱の中にバーナードがいることに気づかないまま、その小さな体に溜められた小水を排尿する。

ジョワワワワアア

黄金水の滝が、クレアの小さな尿道口から溢れ出す。
クレアの持つ杖から放たれている光が照らすそれは、一筋の虹を宝箱の中に作り出し一種の幻想的な光景となっているが、当のクレアは放尿の快感で目を閉じ、内部のバーナードはそれを見る余裕などない。

ジョォォォォ……

バーナードはかろうじてクレアが解き放ったおしっこの直撃を避けることに成功し、飛沫を浴びながらも尿の海を泳ぎ生きながらえている。

「ぐ、なんとか直撃は避けられたけれど……飲んじまったよ、クレアのおしっこ」

ペッペと吐き出すが、口に含まれてしまった尿の大半は飲んでしまったらしい。

「あいつ、今朝トイレ行ってなかったな……おしっこの味なんて知らなかったけどかなり濃いぞこれ」

周囲を満たす生暖かい尿の海は黄金より更に濃く、若干赤みがかった非常に濃い色をしている。
ただでさえ朝トイレに行かなかった上に、ダンジョン攻略という運動をこなしたことでクレアの体内からは水分が失われ、非常に濃い尿が生成されている。
量も非常に多く、おしっこの海の水かさは瞬く間に増えていき、大きさとしてはそこまで大きくはない宝箱内の多くをクレアの尿が満たす。

ジョボボ……ボ……ボ

長く続いた放尿も途切れ途切れとなり、遂には膀胱内の全ての尿を出し切ることに成功した。

「ふう……」

「助……けて……くれ」

「……おや?」

用を足したことで落ち着きを取り戻したクレアの耳に、小さな声が入る。
これは今まで探していたバーナードの声。そしてそれは今まで自分が用を足していた宝箱の中から聞こえてくる。
すなわち……

「……すみません!!」

クレアは赤面し、自らの尿の海で溺れかけているバーナードを助け出す。
その後、非常に気まずい空気が続いたもののどうにかバーナードたちのパーティは様々な活躍を遂げ、今ではこのような危機も(主にバーナードとクレアにとっての)笑い話として済まされることとなった。

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