縮むチヂミ(小説版サンプル)

fantiaの500円プラン作品2021年12月号その1のサンプルとなります。
本投稿では作品内から一部分を抜粋しています。
https://fantia.jp/posts/1055861

「こちら、当店サービスの創作料理。縮むチヂミとなっております。特別なレシピにより筋肉が縮み、より力強くなれる一品です」

 ……ドーピングの気配がするが、大丈夫なのだろうか。

「別にスポーツとかやってないんだけどなあ……まあ、無料ならありがたく頂くよ」

「私には! 私には何かないんですか!!」

 チヂミを貰った僕を恨めしそうにしていたのか。春香もサービスを要求している。
 ちょっとみっともない気がするが、幼い風貌の彼女なら、子供っぽくて可愛らしいとも見られる。

「お嬢様にはこちらを」

 差し出された料理は、ラーメン。

「これは一体どのような……」

 僕に出されたチヂミのような、なにか特別な効能があるのだろうか。

「いえ、ただのラーメンです」

「ああ、はい……」

 ただのラーメン。無料のラーメン、とかけていたのかもしれないが、春香はどこか残念そうにしている。

「それじゃあ、食べるとしようか。いただきます!」

 早速サービスの縮むチヂミを口に入れる。すると、たちまち体中の筋肉が脈打ちだし……

「こ、これは……!?」

 あまりにも早く、料理の効果が出たのだろうか。しかし、それと呼応するかのように僕の意識は薄れていく。

「あ、あれ……なんだか眠く……」

「大丈夫ですか!? 今店員さんを呼びます!」

 呼ぶまでもなかったのだろうか。僕は薄れゆく意識の中で先程の料理人の姿を視界に捉えて言葉を聞いた。

「どうしました!? ……なるほど、連れの方が急に。私のキッチンで看病をしましょう」

「ここ……は……?」

 再び意識を取り戻した先の世界。そこは、異世界を思わせる異常な光景だった。
 天井からぶら下がっているのは様々な料理器具。壁にはキッチンシンク。台の上にはまな板や鍋。そして多数の食器。
 なるほど、ここはキッチンなのだろう。しかし、決定的におかしいことがある。
 それは、この空間に存在するもの全てが巨大だということだ。

「ふふふ、どうやら縮むチヂミが効いているようだな」

 僕の目覚めを把握したのだろう。頭上に先程の料理人が顔を見せる。しかし、この空間にある数々の食器同様、彼の顔も巨大で視界の全てはそれに埋まってしまう。

「どういうことだ! なんだか周囲が大きいぞ!!」

「冥土の土産に教えてやろう。私は暗殺料理人、貴様の暗殺を請け負ったものだ」

「暗殺……? そんな、僕はただの一般人だぞ。早く春香のところに帰してくれ!」

 僕の要求を聞く彼は、微笑みを浮かべながらこう返した。

「いいでしょう、どのみち私の介入はここまで。直接手を下すのは……」

 続く言葉は死刑宣告。それも、限りなく残酷で無慈悲なもの。

「彼女のお小水、そして排便です」

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