【東方二次創作】新たなるヤンシャオグイ

注意
この作品は東方projectの二次創作です。
独自設定、キャラクターの性格改変が含まれます。
また、オリジナルキャラクターの視点です。

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 気がつくと、見知らぬ空間にいた。
 自分は先程まで、青木ヶ原の樹海を彷徨い命が果てるのを待っていたはずだが……いつの間にやら周囲が茶色の壁で覆われた謎空間にいたのだ。
 次に、異音を感じ取った。肉が裂ける音、喘ぐ声、泣き叫ぶ声……それはおおよそ現実的とは言い難い、地獄の釜から吹き出たような音。
 そう、この茶色い壁で覆われた空間では地獄が繰り広げられていたのだ。
 ある女はナタで男を裂く。
 ある男は年若い女を陵辱する。そして、背後から首を落とされる。
 ある女は、ただひたすら殴打を受け、命が尽きる。
 ここは地獄で、自分がまだ生きているのは幸運としか言いようがない。なぜなら、この空間を脱出するには“この世の悪”を尽くすしかないのだから……少なくとも、壁にはそのように書かれており、そして出口も脱出手段も他にはない。
 だから、仕方がない。仕方がないのだ……。
 俺が、突進してくる女に対してその場にあったナイフで突き刺しても。

 仕方がない、仕方がない、仕方がない……そう思いながら、殺戮を繰り返す。
 気がつくと、百はいたであろう人間たちの姿も今や俺のみ。足元には湖にも等しい血の海が広がっている。本当に、ここは地獄だ。
 だがこれで、脱出ができる。
 そう、俺は安心し、意識を手放した……。

 次に意識を取り戻すと、その光景はまた変わっていた。
 俺は手足の自由が効かず、目の前の世界もまた現実とは思えないものだった。
 視界に移るのは裸の女性……あの地獄でも何度か見た姿だが、現代人の格好をしていた彼女たちとは異なり、今度の女性はいささか時代錯誤な和装だ。もっとも、その和服も脱がされており、今では貧相な胸と、鬱蒼と生い茂った陰毛の森が露わとなるだけなのだが。
 和装の女性は泣きわめいているように見える……見えるというのは、声が聞こえないのだ。手足の自由とともに、耳も聞こえなくなってしまったのだろうか。とりあえず、彼女の方は拘束されながらも頭部だけは動かせるようで、口をぱくぱくと開閉させている姿が印象に残る。
 お互い逃げ出すことはできない。俺は身体の自由が効かないし、目の前の女性も手足が縛られている。だから、なすがままにしかならない。
 ここまで来たらどうにでもなれ、と自らの運命を手放した俺は操られるがままに、女性の股ぐらへと押し付けられる。
 顔をではない。体全身をだ。それはまるで、身体が縮められたかのようで、納得はとてもできないが、異常事態の連続で理解はできてしまった。
 耳は聞こえないのに鼻は効くし目も見える。これは嫌がらせなのだろうか、女性の股間からほとばしるフェロモンとアンモニアの臭いが混ざり合い、ただでさえ擦り切っていた正気はみるみるうちになくなっていく。
 だからだろうか、俺は自分が置かれている現状を最後まで理解できず、流されるように運ばれていってしまった。女の洞窟、その最奥まで。
 突然現れた、拘束された裸の女。その股ぐらにある、密林に覆われた巨大な穴。真紅の洞窟、その奥……すなわち子宮。
 本来は子宝を育むためのその場所には、たしかにあった。本来なら至高の宝と呼べるそれが。
 だが、ただいまより宝は魔の物へと変貌する。他ならぬ、俺の手によって……。
 妖術の類に対する知識はまったくないはずだが、なぜかそれだけは理解できたしまった。
 そう、俺は何らかの術の道具へと成り果ててしまったのだ。
 罰、なのだろう。自死を願いながらも地獄から逃れようと、悪逆の限りを尽くした矛盾に対する。

 蠱毒という術がある。
 それは、古くは古代中国にて用いられた邪法。数多の虫を共食いさせ、神へと昇華させて祭り上げ、その毒を用いた呪いである。
 動物を用いた呪術は蠱毒をはじめとして、犬なら犬神、猫なら猫鬼と様々あるが、ならば人なら何ができるだろうか?
 幻想郷の邪仙、霍青娥は思う。自身の術ヤンシャオグイは流産した胎児を用いた邪術だ。既に、術として非常に強力なものではある。だが、それ以上のものを作れないだろうか、と。
 そう、例えば……蠱毒の応用。人間同士を食い争わせ、生き残った人間を人蠱の式神として使役する。
 その式神を妊婦に取り憑かせ、流産させて産まれた胎児を使ったヤンシャオグイ。それは非常に、強力なものではないだろうか。
 青蛾は計画を練るとすぐさま実行に移した。人間同士の大掛かりな共食い。そんなことをすれば、幻想郷内のバランスなど容易に崩れ去り、賢者共に目をつけられるだろう。
 だが、外の人間なら。
 賢者たちは幻想郷の人妖には気を配るが、外からの人間にはある種残酷な一面を持つ。
 一部、贔屓されているように見える者もいるが、その多くは妖怪の餌とされるという。なら、私が彼らを素材にしても問題ないのでは?
 そう。私は外の世界から訪れた人々を縮め、壷に入れ殺し合わせ、出来上がった怨念を式としたのだ。
 妊婦ばかりは幻想郷の者を使ってしまい、悪事がバレた私はいずれ退治されるだろう。だが、それだけだ。
 たった一度の誅伐で大きな術を手に入れられたなら、それは私の勝ちと言っても差し支えないのだから。
 私は笑顔で、胎児の亡骸を持ち帰った。

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