黄金オアシス

前略、お父上、お母上。
どうやら俺はサハラ砂漠で枯死しそうです。
……突然何があったのかと言うと、俺はひょんなことから警備をすることになった麗華お嬢様の付添でサハラ砂漠へ旅行に来ていたのだが、遭難してしまったのだ。

「それで、どうするんですかお嬢様。このままでは私も貴方も脱水症状で倒れますよ」

「……こうなっては致し方ありません。最終手段を取らせていただきましょう」

麗華お嬢様は、非常に真剣な面持ちであった。お嬢様の言う最終手段、それがどのようなものであっても俺はそれに従おう。
仮にそれが俺の生き血を啜って彼女が生きるというものであっても……

「真司さん、貴方には街へ付くまでの間私の膀胱の中に入ってもらいます」

「ええ、わかりました。それがお嬢様の命であれば……うん?」

待て、彼女は一体何を口にした。膀胱の中に入れ? ……膀胱?

「膀胱って言いました? 膀胱の中に入れ、と」

「そのとおりですわ」

やはり、彼女の目つきは至って真剣そのものだった。
だからこそ、何を口走っているのか理解できない。

「ちょっと待って下さい。俺は貴方よりも大きいんですよ? どうやって入れというんですか」

「それについては難しくありませんわ。いざという時に役立てないかと、縮小薬を持ってきましたので、貴方がそれを飲めばなんとかなります」

縮小薬、それはお嬢様の会社で開発中の薬だ。主に医療目的で使うことを想定しているらしいが……
まさかこんな場面で使われるとはお嬢様のお父上も予想外だっただろう。

「なんでそんなものを……まあ、持ち出したことについてはおいておきましょう」

「それが懸命ですわ。理解できたなら、縮小薬をお飲みになってくださる? 3錠も飲めば私の尿道を通過するのに十分な大きさになるかと思いますわ」

「いやいやいや、そもそも貴方は嫁入り前の女の子でしょう!? もっと恥じらいを持ってください。俺だって男ですよ」

「大丈夫ですわ。私は貴方と添い遂げると決めましたので、いずれ見られるものを恥ずかしがってなんていられません」

このお嬢様は変なところで男らしいというかなんというか……
昔、俺が彼女の命を救ったきり何故か俺にくっつきっぱなしだ。一応俺は彼女の護衛として雇われているのだが、ここまで来るとどっちが護衛なのかわからなくなる時もある。

「まあ、実際は貴方には真っ暗なところで私の尿道を探して貰いますので、直接秘部を見られない分そこまで恥ずかしくはありませんわ」

「そうですか、それなら……いや、今度は何を言ってるんですか!?」

「貴方には私のショーツの中で膀胱に続く穴……尿道口を探して貰いますわ。まさか、この灼熱の砂の上に裸で寝転がって性器を晒せと言いますの?」

砂漠の砂は昼間だと60度あるという。そんな灼熱の上にお嬢様を寝かせると大やけどは避けられないだろう。

「貴方がそれでいいなら……」

なんだか騙されているような気もするが、実際恥ずかしいのは俺よりもお嬢様だろう。ここは心を無にするべき……もう何も気にしないようにしよう。

「わかったならそれでいいですわ。さあ、この貴重な水と一緒に縮小薬をお飲みになられて」

「でも、せめてこれだけは聞かせてください。俺が貴方の膀胱内に入るというのは、どういう考えからですか?」

「お答えしましょう。ここサハラ砂漠は灼熱の太陽で、ただ立っているだけでも直射日光や脱水症状で命に危険が及びますわ」

「そうですね。そして、もう水は余裕がないことも承知しています」

「でも、水の消費を一人分に抑えて更に直射日光も防げる手段があるとしたら?」

「それが……お嬢様の膀胱の中だと?」

「そのとおりですわ。私の膀胱の中にいれば直射日光は避けられて、しかも私のおしっこを飲めば水分も補給できます」

「百歩譲って貴方のおしっこを飲むとして、塩分とか……その、大丈夫なんです?」

「大丈夫だと思いますわ。おしっこの塩分で水分が抜けても、それ以上におしっこを飲めば枯れることはないという理屈ですわ(*諸説あります)」

「納得は難しいですが……わかりました」

俺はお嬢様の小さな手から、取りこぼさないように丁寧に縮小薬を受け取ってそれをまとめて飲む。
すると、みるみるうちに周囲の光景は広大となり、俺の肩ほどの大きさもなかったお嬢様の姿はあっという間に天を穿つような巨人へと変貌した。
身長1mmへと縮小された俺の姿は、もはや衣服の上に乗っかった一粒の砂と見分けを付けることすら困難だろう。

「真司さんは……ここですわね」

しかし、お見事と言うべきかもはや呆れるというべきか。お嬢様は砂粒ほどの大きさの俺を瞬時に見極めてその手のひら……小さかったはずの巨大な右手へとつまみ上げてくれた。だが、些細な力で持ち上げたつもりだったのだろうが、その気遣いがあっても俺にかかるのは強烈な浮遊感だった。

「うおっと!」

「ああっ、すみませんわ。ゆっくり持ち上げたつもりでしたが今の体ではこれさえも大変ですわね」

ともあれ、俺の体はお嬢様の巨大な顔の前まで持ってこられた。若干ツリ目の、しかしキツそうな印象はなく優しげな表情をしたお嬢様。彼女は今まさに、大母のように君臨していた。

「それじゃあ、ショーツに入れますわね。……覚悟はよろしくて?」

「はいはい、どうせここまで来たら無理矢理にでも入れるつもりなんでしょう? 貴方と一緒にいる時点で、もう何があっても受け止める覚悟はできてますよ」

「ふふっ、それが聞ければ十分ですわ」

そして、お嬢様は今度こそゆっくり、ゆっくりと右手を降ろしていき下腹部の前へと連れてきた。そしてスカート……流石に学校で着ているようなミニではない長さのそれの腰紐を緩め、俺を更に股間へと近づける。
そして遂に純白のショーツは左手によって口が広げられ、傾斜を付けられた右手によって俺は遂にお嬢様の秘部の前へと放り出された。

(うっ、汗とおしっこの臭いが混ざってすごい事になってるな……)

そこは妙齢の少女によって形作られた花園……などという表現は到底できない場所であった。
砂漠の気温による発汗、そして尿の拭き残しはショーツ内を強烈な湿度に保っており、不快度指数は上限を超えるほどのものだった。
臭いも尋常ではなく、尿とおりもの、汗の臭いが混ざって尋常ではない悪臭を放っている。それは可憐な姿をしているお嬢様からは到底想像できないものであった。
周囲を見渡すと、お嬢様の肌のあちらこちらで生い茂る漆黒の柱はまるで陰毛によって形成された密林のようだ。

(だが、お嬢様が恥を偲んだ好意で案内されているんだ。俺も彼女に見合うよう頑張らなければ)

少し経つと、上空からパチンという音が聞こえ、周囲は暗黒に包まれた。ショーツは入り口を閉じられ、遂に俺はこの高湿度の閉鎖空間に閉じ込められたのだ。

(行くしかない……な)

覚悟を決めた俺は、お嬢様の陰毛柱を伝って上へ上へと登っていく。
大陰唇の崖を登っていると、今まで以上に強烈な臭いが漂う空間へと辿り着いた。真っ暗で何も見えないが、この近くに目的地への入り口……即ち尿道口があるのだろう。
俺は小さな体を活かして陰裂の狭間を通り抜け、お嬢様の小陰唇内部へと潜り込ませては更に女体探索を続けていく。

ここから先は陰毛の柱がない。だが、柔らかい皮膚の壁になっている分かえって登りやすい……のだが。

(うげええ、ちょっとこの臭いは……)

俺は思わず戻しそうになる。すぐ近くに外尿道口や膣があるせいで、今まで以上に強烈な臭いで溢れかえっていたのだ。
汗も休まず肌からにじみ出ており、酸っぱい匂いとアンモニアの臭いが混ざって今にも吐き出しそうだ。

(我慢……我慢……)

それでも俺は、少し休むと皮膚のシワを頼りに小陰唇の内部を登りだす。登っている途中の膣は目的地ではないため、そこだけは避けて通りようやくお嬢様の外尿道口へと辿り着いた。尿道口の入口付近には彼女が排尿した時の拭き残しか、多少の尿が残っていた。

チャポン

という音はお嬢様本人には聞こえなかっただろう。だが、俺は尿の雫を潜って遂に尿道内部の探索を開始できた。
ここまで来ると、汗やおりものの臭いは薄れている。尿の臭いはより強くなっているものの、他の悪臭と混ざらない分むしろ快適かもしれない。
ぐずぐずとし、歩くことも覚束ない肉の洞窟を直進すると、今までで最も尿の臭いが溢れ出す……そんな行き止まりへと到達した。
ここが最終目的地、膀胱の前だ。だが、その前に膀胱を閉ざす門である内尿道口が立ちふさがっていた。

(力には自信があるが……問題はむしろその後か)

はて、お嬢様は俺をショーツに入れる前に排尿をしていただろうか。嫌な予感は止まらないが、もはやコミュニケーションが困難な体である以上諦めてやることをやるしかない。
俺は思い切り力を込めて、門をこじ開ける。すると……

「んっ、ぁああああ!!」

尿道の外から、お嬢様の悲鳴が聞こえる。このタイミングでこの声色だと、やはり恐れていたことが現実になったか……
声がするのとほぼ同時、門は開かれた……当然、内部の黄金水は濁流となって俺を襲う。
せめてものあがきとして、尿道の床に四つん這いになってしがみつくが、膨大な黄金水には些細な抵抗でしかなかった。せめてもの救いは、流されても尿道口の崖際でしがみつくことに成功したことだろうか。これであの悪臭のなか再び陰唇を登り直すといった事態だけは避けられそうだ。

「す、すみませんわ! おしっこをして膀胱を空にする、なんてことすっかり忘れて……」

外からはお嬢様の謝罪の声が聞こえるが、こちらからの声は届かないだろう。それでも……

「俺の方も、変に遠慮して言い忘れてました。ここはおあいこということにしましょう」

聞こえない以上彼女の罪悪感には全く届かない。ただの自己満足でしかないが、従者として最低限の礼儀をしたつもりだ。
改めて尿道の洞窟を進み、今度こそ門を開けて膀胱へと辿り着いた。

光の差し込まないこの空間は当然暗黒に包まれているが、尿の溜池なだけあってアンモニアの臭いで満ちていて、もはや俺の吸っている空気自体がまるでおしっこのようでもある。
それから何時間経っただろうか。お嬢様の体外からプロペラのような音が聞こえてきた。定期連絡すら行われないことを不審に思った会社が救出に来たのだろう。
結局、俺が脱出できたのは膀胱が満杯になってから更に数時間が経過してからだった。
その間外からはお嬢様を心配する声や俺に呆れる声など様々な声が聞こえてきた。お嬢様も、多くの人が寄ってたかって詰め寄ってきたため用を足すために席を外すこともできなかった、ということだったのだろう。
ともあれ、どうにか俺は以前の日常を取り戻すことができた。

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