ここはキヴォトスと呼ばれる、多数の学校によって統治される超巨大学園都市。
私はこの都市で“先生”という役職で活動している。
もっとも、今の私にとって巨大なのは都市の規模だけではなく、ありとあらゆる物が巨大と呼べるのだが……。
今の私の身長はおよそ1mm……もないほどに矮小な体躯だ。
ひょんなことからこの都市で行われたとある治験に参加したのだが、詳細を確認せずに薬を打ったのがまずかったのだろうか。
私はその薬の副作用で小さくなってしまったのだった。
それが、これまでの話。今は生徒に手伝ってもらいトリニティ総合学園の図書室を訪れていた。
ここにある蔵書を当たれば、なにか解決策が見つかるのではないかと考えてのことだ。
「そ、それで私の元に来たんですね……」
今私の目の前……むしろ、頭上で話している少女は古関ウイ。
ここトリニティ総合学園の図書委員長である。
白い制服にダボついたセーターを着た彼女はスレンダーな体つきから、たとえ小さくなってカウンターの上に置かれたこの身でも、見上げれば素直に表情を見せてくれる。
「わかりました……薬には薬です。薬物や薬草の本を調べてみましょう」
そう言って彼女は席を立つと、1分も経たずに何冊かの分厚い本を持ってきた。
図書室の蔵書を完璧に把握している彼女にとって、目当ての本を探り当てることなど朝飯前ということだろう。
「私はこの本の中から手がかりを見つけてみます。その間先生は……け、見学ですか? わ、わかりました……」
ここまで協力してくれた生徒には一度帰ってもらって、私はウイの読書を見学することにした。
何もできることはないが、一刻も早く彼女がもたらす情報を知りたいがためだ。
私は巨大な本の壁を挟んで向こう側の天を塞ぐウイの顔を見ながら、彼女がページを捲る様子を眺めていた。
あれから何冊の本を読み終えただろうか。
ウイは本を読む速度こそ変わらないものの、その表情には若干の疲れが伺える。
そして、時折ページを捲る指先に対し舌で舐める動作も行うようになった。
長時間休まず読書し続けたことで乾燥し、ページが上手く捲れないことが時々あるようだ。
読書は続く。だが、本を読み終えるその直前に悲劇は起こった。
ウイは指先を舌でなめる。そして、その湿った指が私に覆いかぶさったのだ!
「うわあああ!!」
叫び声を上げるが、読書に集中するウイの耳には届かず、私は彼女の指先。その指紋の谷間に挟まってしまった。
ウイは自分の指紋に挟まる私に気づかないまま本を読み終える。
そうして一段落し、彼女がリラックスしたときに第二の悲劇が起こった。
「お、お尻がかゆいですね……」
その言葉とともに、私が密着した指を下方へと動かすウイ。
「はしたないですが。一段落しましたし……い、いいですよね」
全然良くない!!
ウイはそのままスカートを開き、純白のパンツの内側へと指を滑り込ませる。当然、その指先には私が付着したままだ。
目の前には、おとなしい文学少女ウイの肛門が。そして、それは不気味にヒクヒクと蠢いてもいて……。
「あっ」
ボフゥ!!
肛門は一瞬大きく開き、その内側に溜め込まれていたメタンガスを一斉に放出する。
「お、おならも出ちゃいました……」
それを直に浴びた私の一瞬意識を失いかけたが、気を取り戻すと立て続けに困難は待っていた。
「じゃあ、ちょっとだけ……か、掻いちゃいましょうか」
「アッー!!」
私……もとい、私を指紋で挟んだウイの指は彼女のアナルに思い切り突き刺さる。
そうなると私の空気はもはや全てがウイの体内で熟成されたうんこガスで、目も喉も熱く苦しい。
「うええええっ! 出して、出してくれ!!」
そのような懇願も彼女には届かず。責め苦は更にエスカレートする。
「き、気持ちいいですね。はしたないですが、許してくれますよね……」
ウイの指は彼女の直腸壁をこするように掻き回し、彼女に快楽を与えていた。
私の意識は上へ下へと引きずり回され、もはや今いる場所がどこなのかもあやふやだ。
「そ、そろそろいいでしょう。読書に戻らないと」
やがて彼女の蹂躙劇は幕を閉じ、巨大な指は肛門を抜けていった。
…………ただ一人、私を置いて。
「ま、待ってくれ!! 私も出してくれ!!」
ウイの指が行った激しい上下運動は、その指紋に挟まれるだけだった私を腸壁の出す粘液に絡め取らせてしまったのだ。
私は指に置いていかれ、ウイの直腸に閉じ込められてしまった。
「そんな……どうすれば」
ウイの直腸に閉じ込められて何時間経っただろうか。
外から体の主であるウイの声が聞こえる。
「す、すみませんがトイレに行ってきます」
トイレ、つまり彼女は大か小かはわからないが排泄を行うということだ。
もしそうなるなら、彼女のうんことともに脱出することもできそうだ。
……いかにも大人しげな少女のうんこに伴われなければ身動きができない現状は非常に歯がゆいが。
宣言後、しばらくすると私の足元から光が差し込む。ウイが排便をしようとしているのだ!
「う、うーん……!」
力む声。足元では口を開いたり閉じたりしながらひくつく彼女の肛門。
今すぐ脱出したいところだが、腸壁の粘液に絡め取られたこの身では動くことができない。いずれ来る彼女のうんこに身を任せるしかない。
ゴロゴロ、と腸の奥から何かが……いや、ぼかすのはやめよう。
ウイのうんこが降りてくる音が聞こえる。そうしてやってきた茶色の土石流は、私を飲み込んでいき、外へと一斉に飛び出る。
ビチビチビチッ! ビチッ!
「う……下痢だなんて」
治安が悪いこの都市でゲリラに襲われることは頻繁にあるが、下痢に襲われるなんて考えたこともなかったな……。
ともあれ、脱出することはできた。痕はウイに気づいてもらうだけだが……だけだが?
「あっ、もっと来そう……ですっ!」
うんっ、と再度力む声を上げるウイ。足元の和式トイレに放り出された私には気づく様子もなく、立て続けにその双子山の間にある虚空の穴から新たなモノを産み出そうとする。
「ま、待ってくれ! まずは私を……」
声は届かず。彼女の肛門はミチミチと音を立てながら、茶の大蛇を産み落とそうとする。
推定落下地点は私の真上。押しつぶされたら、気づかれようもない。そうなると、うんことともに下水へ流されるだけだ。
せめてそれだけは避けなければ!
「うおおおおおっ!!」
足元に飛び散るウイの下痢便。巨大な下痢うんこ片。
それらを背景にダッシュ。私は下痢便に足を取られて躓いてしまったが、なんとかウイの軟便に覆い隠されることだけは回避できた。
……体の下半分は、その軟便に挟まれてしまったのだが。
「な、なんとか最悪は回避できたか」
最悪“は”、回避できた。だが、災難はまだ続くようで。
「お、おしっこも出そう……ですね」
ブシャアアッ!!
頭上から、黄金の雨がスコールのように降り注ぐ。
私はウイのおしっこを避けるすべもなく、全身でその尿を受け止める他なかった。
彼女の排尿によって軟便は砕け、周囲の下痢便も流されて行ったのは不幸中の幸いだが。
「ふう、すっきりしました」
まずい、このまま安心していると、下水に流されてやはりおしまいだ。
「ウイ!! ここだ!! 助けてくれ!!」
思い切り空気を吸い込み、声を張り上げる。
周囲に存在する空気はウイの体内で熟成されたおしっこアンモニア臭と下痢便&軟便スカトール臭だが、そんなことを気にしてはいけない。
「え、先生の声……?」
ウイはようやくこちらに気づいたようで、足元に顔を向ける。
「せ、先生……! どうしてそんなところにいるんですか!?」
それから私はウイに救出され、体も元の大きさに戻って事なきを得た。
事情の説明に苦労したのと、ウイの大便臭がこびりついたまましばらく生活する嵌めになったが、今となってはいい思い出……なのだろうか。